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コンサル転職は直接応募が有利なのか?

“The will to win is not nearly as important as the will to prepare to win.” Bobby Knight

勝つ意欲よりも、勝つための準備の意欲の方が重要だ。

ボビー・ナイト

未経験からコンサル業界に転職を考えています。本気度を示すためにはやはりエージェント経由でなく、直接応募した方がよいのでしょうか?

結論から言うと、直接応募はむしろ不利なのでおすすめしません。

まず、応募前の志望度の高さなどは合否判断にそれほど影響するものではありません。面接を通してあなたが「コンサルタントとして活躍できる」ことを示すことさえできれば、応募方法がどうであろうとも内定を勝ち取ることができるでしょう。

当然、直接応募であろうと転職エージェント経由であろうと、応募に必要な書類や面接プロセスが変わるということはありません。したがって、直接応募では得られない情報や交渉上の優位性を得ることができる転職エージェントを利用することは一定の合理性があります。もしあなたがコンサル業界の内実にすでに詳しいのでなければ、気を衒わずに素直にエージェントを利用するのがよいでしょう。

当記事では、エージェント経由で具体的に得られる直接応募にはないメリットについて、解説してみます。

なお、もしコンサル業界になんらかのツテがあるなら、転職エージェントを併用しつつ、リファラルを利用するのが最善の方法なので、参考記事を載せておきます。

外資系コンサルタントになりたいならまずリファラル(紹介)を狙おう

直接応募とエージェント経由の転職プロセスの違い

エージェント経由の応募で享受できるメリットとデメリットについて、採用プロセスの格段面における直接応募と比較しながら順番に見ていきましょう。

応募前の情報収集

まず、エージェントに登録すると、志望業界で現在募集されている求人情報を担当エージェントがまとめて紹介してくれます

他方、直接応募の場合は、自ら逐一ファームを調べて情報収集しなければなりません。エージェントの手元には、ファームの求人ページなどには記載がない、具体的な応募要件が記載された求人票があり、あなたの経歴や要望に合うのかどうかを判断するための有効な情報源とすることができます。

また、ファームによっては、サイトに応募ページを掲載しているものの、実際には求人を一時停止していることもしばしばあります。転職エージェントはこういったリアルタイムの状況についても把握していることが多いため、適切なタイミングでの応募が可能です。

ただし、どの求人を紹介するかは担当エージェントに委ねざるを得ないため、有効な求人を見落とされたり、不適切な情報を提示されるリスクがあります。したがって、この段階では複数のエージェントに登録して情報量を増やしつつ、相性のよい担当エージェントを見つけることが重要です。

応募前の書類準備

エージェントが応募書類の合否判定をすることはありませんが、それでも応募書類の添付忘れがないように最低限のチェックをしてもらえるのはメリットでしょう。

応募に当たって、履歴書や職務経歴書のフォーマットをどうするかは悩ましいところですが、各エージェントが実績のあるフォーマットを用意しているため、それらを利用できるのもメリットです。※具体的な書類フォーマットの選び方については下記記事が参考になります。

コンサル転職の履歴書フォーマットは何を使うべきか

また、コンサル業界に特化しているようなエージェントの中には、実際にコンサル経験のある担当者も多いため、書類添削や模擬面接などの機会が得られるようなところもあります。当然、担当エージェントはあなたの内定が歩合給につながるため、あなたの内定確率を上げるような行動を期待してもよいでしょう。

面接の日程調整

面接日程については、併願する企業の進捗具合と合わせて、あなたの希望日程でエージェントが調整してくれます。早く進むところには待ってもらったり、他と比べて日程的に進みが遅いファームに対しては催促してくれたりもするでしょう。

直接応募の場合、合否判定にせよ、日程の決定にせよ、どうしても先方からの返事待ちということになりがちだと思います。もちろん自ら催促して交渉すればよいのですが、相手の内情がわからない中で強気の交渉は難しいというのが人情だと思います。

運悪く面接の担当官が人事へのレスポンスが遅いルーズな人に当たってしまうような場合などもあると思います。また、人事部門は少人数で非常に多くの応募者を捌いているので、どうしても個別の対応が遅れがちだったり、連絡ミスなどが発生してしまうこともありがちです。そういった場面でもエージェントは活躍してくれるでしょう。

内定後の交渉

内定が決まると、そこからは年収交渉、入社日程調整に入ります。

もし併願している会社の面接がまだ残っている場合、それが終わるまで内定受諾を引き延ばしたいでしょうが、そういった交渉もやはりエージェントがやってくれます。

とりわけ年収交渉については、エージェントを挟むのは大きなメリットです。ファーム側は内定ポジションの標準的な額面提示をしてくるわけですが、内定辞退をされるのは非常にコストデメリットが大きいため、実はかなりの交渉余地があります。

相場観が分からないとそもそも年収交渉は難しいのですが、エージェントはどのくらい交渉余地があるのかある程度情報を持っているはずなので、それを利用しない手はありません。さすがにポジションの設定金額を大きく超えることは難しいですが、少なくとも買い叩かれるリスクは防ぎやすくなります。このあたりの事情については後述します。

また、エージェント経由であれば、仮に不合格であっても、なぜ不合格判定だったのか簡単なフィードバックがもらえることも地味にメリットかもしれません。

転職エージェント利用のメリットまとめ

前章で見てきたように、エージェントには、内定までのあらゆるプロセスにおける情報の非対称性を緩和してくれる「情報源としての役割」と交渉を有利に進めるための「仲介者としての役割」があります。ここで、あらためてこの2つのポイントを整理しておきましょう。

直接応募では得られない情報

  • 求人の詳細情報(応募要件、採用基準など)
  • 過去の応募者の内定実績
  • 現在の採用状況(応募ポジションの予定採用人数、採用時期など)

エージェントの営業担当者は、各ファームの採用担当者とコミュニケーションを取っているため、そのエージェントならではの内部情報を保持しています。これらの情報はネット上など誰でもアクセスできるところには出てきません。

エージェントを利用すればそういった採用活動にプラスに働く情報を無償で得ることができるため、たとえエージェント経由ではなくあえて直接応募やリファラル応募を狙う場合であっても、事前の情報源として活用しない手はありません。

なお、ファームが契約しているエージェントの数はかなりの数になります。実際には採用まで至った実績がゼロというところもいくつもありますし、逆に実績が多いところもあります。が、実は過去にこれらの統計データを分析してみたことがあるのですが、エージェントによる有利不利があるわけではなく、単純に応募数が多いところが採用まで至ることが多いというだけでした。

したがって、特にエージェントにはこだわる必要はなく、相性のいいところを複数登録しておくのがよいでしょう。ただし、採用された実績が多いであろう大手のエージェントも登録先には含めておく必要はありそうです。

採用プロセスにおける各種交渉代行

  • 面接日程・入社タイミング
  • 年収条件

調整ごとの中でも一番気になるのは、年収交渉でしょうから、ここではその話をします。

まず、内定時点でファーム側はあなたの希望年収、そして経験や前職の給与水準に照らして妥当と思われる年収提示をしてくれるはずです。基本的に年収アップを期待してもよいでしょう。

とはいえ、提示金額に対して、交渉したくなる場面もあるかもしれません。

たとえば、仮にあなたが1000万円を希望していても、前職の給与が800万円で、採用見込みポジションの給与テーブルのレンジが850-950万円ということであれば、下限の850万の提示が現実的なラインだと思います。(※ここであげている数字は適当です)

ですが、この仮定のケースでは950万までは交渉の余地がありそうです。希望通りの1000万を通すには採用ポジションを上げる必要があるため、基本的にはそれは通らないでしょう。ただし、もしあなたの面接での評価が著しく高く、他のファームでも内定を得ているような場合、採用年度限定での特別支給のような形はありえます。

が、直接応募であれば、提示金額の裏側にあるこのような事情を窺い知ることは困難です。そんな中でうまく好条件を引き出すような交渉を行うにはそれなりに知略と勇気がいるでしょう。ところが、エージェントを仲介すれば、このような交渉もしやすいでしょうし、エージェント自身、あなたの年収の高さがインセンティブに直結するため、協力してくれると思います。

具体的には、希望年収に至らない理由、採用ポジションとそれに対応した給与水準、その後の昇進で想定される給与、ボーナスの見込み、昇給タイミングあたりの情報をうまく引き出すことができれば、交渉材料として使えます。もちろんこれらは機密的に教えてもらえないものも多いとは思いますが、内定を得たという状況は圧倒的に交渉力がある状態なので、現実的なラインでなるべく多くもらえるように交渉してみることをおすすめします。

なお、下記の記事で書いた通り入社タイミングによっては昇進タイミングが1年前後する可能性もあるため、それも考慮しておく必要があるでしょう。まあ、とはいえ長い目で見れば1年の差や100-200万円程度の差は誤差の範疇ともいえるので、そこまで年収にはこだわらなくてもよいという考え方もありですかね。

コンサル転職の適切なタイミングはいつか?

最後に

ここまで見てきた通り、エージェント経由の応募はメリットばかりなので、利用しない手はありません。唯一デメリットを挙げるとすると、エージェントに当たり外れがあるということだけです。

そのデメリットも、複数のエージェントを併用することによって相殺することができます。コミュニケーションコストはかかりますが、相性のよい担当者を引き当てるためには、やはり転職活動の初動段階でなるべく多くのエージェントに登録してみるのがベストだと言えるでしょう。

担当エージェントが、あなたに対して真摯に対応してくれそうか、各種連絡を取りこぼさず速やかに対応してくれそうかをしっかり見極めた上で、応募書類を預けるエージェントを決めましょう。その局面では、あなた自身が数あるエージェントの中から身を預ける相手を選ぶという、ある意味で面接官の役割を担うようなものですから、それも得難い経験と捉えてぜひ多くのエージェントと面談してみてください。