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経営コンサルタントになるために有利な資格とは

I will prepare and some day my chance will come. ーAbraham Lincoln

準備をしておけばいつかチャンスは訪れる

エイブラハム・リンカーン

経営コンサルタントを目指しているのですが、持っていると有利な資格はあるのでしょうか?中小企業診断士にチャレンジしてみようと思うのですが意味があるでしょうか?

どんな資格を取ればよいのか、という質問はコンサル志望者から非常によく聞く質問の一つです。

まず結論として、何らかの資格を持っていることがコンサルの選考において有利に働くということは残念ながらありませんあくまでも知識や経験を下地に、どれだけゼロベースで価値を生み出すことができるかが問われるのがコンサルタントの仕事だからです。

ただし、資格を持っているということが、あなたのキャリアに対する本気度を証明する一つの手段になることは確かですし、習得の過程で得た知識やスキルが役立つことはきっとあるでしょう。もし、あなたが思い描く経営コンサルタント像に対して、論理的にその資格が役に立つと主張できるものであるならば、挑戦してみることは決してマイナスにはならないはずです。

本記事では、経営コンサルタントにとっての資格について深掘りしてみたいと思います。

コンサルになるために資格が必要ない理由

履歴書にどんなにきらびやかな資格が並んでいても、それ自体が合否判断の要素とはなりえません。面接の場では、その資格をなぜ取得したのか、その資格を取得するためにどのようなアプローチを取ったのか等々、あなたの行動特性やポテンシャル、そしてキャラクターを理解するための素材として扱われるのが関の山でしょう(多くの場合、あなたの所持する資格に言及されることすらないと思います)。

所持している資格そのものが重視されないのには下記の理由が挙げられます。

定型化されたものではない本質的な問題解決力が必要

コンサルタントとして企業経営の問題解決に関わっていると、型を当てはめただけで解決できるような課題はもはやどこにも存在しないということに気づきます。

フレームワークは日々開発され高度化されていますし、ファームの中に先端事例はケースとして次々と蓄積されていきます。それらを参照し、活用できないかと知恵を絞るのがコンサルタントの日常です。プロジェクトの課題解決ではそれらの知見をベースにさまざまなアレンジが必要になってきますし、場合によっては全く新しい型を現場で生み出すことも必要です。

このような知的労働に対して、既存の知識体系に沿った記憶力を問う類の資格勉強は相性が良いとは言えません。答えがあるかどうかすらわからない問題に取り組むことが仕事なので、そういった種類の取り組みにどれだけ挑んできたかがより切実に求められるのです。

各領域に専門家がいる

現実問題として、資格試験を合格した程度の知識レベルでは実用上十分ではないということも資格が重要視されない要因の一つです。

コンサル志望者はゼネラリスト志向が多い反面、物事を突き詰める研究肌の人材も一定数存在しています。おおよそビジネスに関わる話であれば、社内で募ればその分野の世界トップレベルの専門家を見つけることができます。

仮に社内で見つからなかったとしても、大学でも他の企業でもコンサルの名刺を持って行けばまず間違いなく話を聞かせてもらえるため、自分自身が専門知識を備えていなくても聞く力が十分にあれば、知識は補うことができてしまうのです。

従って、実務上重要なのは、あらゆる分野の専門家と対峙して高度な議論を引き出せるスキルです。もちろん専門知識があることはアドバンテージですが、それ自体は本質ではないのです。

コンサル向きの資格とは

とはいえ、資格試験によって得られる知識の中にはコンサルティングの業務で非常に役に立つ種類のものがあるのも事実です。体系立てられた知識を効率的に学ぶこともできるため、資格取得に向けて勉強をすることはプラスになることはあってもマイナスになることはないでしょう

ここでは、そのような資格試験の中でも特にコンサルの仕事と親和性の高いものをいくつか取り上げてみたいと思います。

中小企業診断士

経営コンサルタントという職業を聞いて、真っ先に想起されるのがこの中小企業診断士という資格のようです。実際、コンサルを目指しているので、この資格を取ろうとしているという学生によく出会います。また、コンサル仲間でもこの資格を持っているという層は少ないながらも一定数いるように思います。

ただし、外資コンサルの仕事は大企業や政府等、巨大な組織の戦略や組織運営に関わるプロジェクトが大半なので、コンサルタントとして取り組む課題は小規模事業者が抱える課題とは少々異なるため、この資格で得られた知識をそのまま活用できるような場面は少ないかもしれません。

一方、この資格は幅広く多様な業種に関する基礎知識を詰め込むことができるため、学習効率は非常に高いと思います。資格を持っていることで就活や転職活動が有利になることはありませんが、一通りの教材を読んでおくことで未知の業界のプロジェクトにアサインされた際にゼロベースで始めなくて良くなる利点があると思います。

教材などは書店に多く並んでいるため資格を取る取らないに関わらず興味のある分野を学んでみてもよいかもしれません。

IT系資格

今やどんな仕事においても避けては通ることができないのがITスキルでしょう。IT系の資格は高度に体系化されており、自身のレベルに合わせて資格に挑戦していくことは知識を深める上で非常に有効な学習手段となりえます。ここではコンサルタントにとってどんな仕事をするにも役立つであろうIT系の資格を3つ取り上げてみたいと思います。

情報処理技術者試験

ITを志す人であれば、一度は耳にしたことがあるであろう国家試験が、IPA(情報処理推進機構)が運営する情報処理技術者試験でしょう。初級のITパスポートに始まり、基本情報処理技術者、応用情報処理技術者、そして専門分化したプロジェクトマネージャ、ITストラテジスト等々の各種専門資格があります。

重要なIT知識が網羅的にカバーされているため、SEでなくとも基本情報技術者試験くらいまで挑戦しておくと、様々な場面で必要になるIT用語への耐性がつくと思います。企業のCEO、CIO、あるいはIT部門の責任者との議論を先導することを考えると応用情報技術者試験、さらにITストラテジスト等の上級資格に挑戦してみることも有用です。

高度試験の論述問題を見てみると、実際の現場で遭遇するようなケース問題が多く出題されており、経験を座学で学べるとてもよい資格だと感じます。この資格は書店で様々な参考書を見つけられるのも利点だと思います。

PMP(Project Management Professional)

プロジェクトマネジメント・プロフェッショナルという名の通り、プロジェクトマネジメントに関する専門資格です。特にIT業界で上級SEやITコンサルタントを名乗る方は取得が推奨されていたりするようですし、総合系ファームの在籍者でこの資格を名刺に付記されている方をちょくちょく見かける資格です。

資格を取得するためには所定の実務経験や更新手続きのためのプログラム従事、所属企業からの推薦が必要ですが、資格そのものを取らなくても、この試験で問われるプロジェクトマネジメントが体系化されたPMBOKという管理手法は経営コンサルタントが一般教養として身に付けておくべきものの一つでしょう。

もちろん実際のプロジェクト管理はお手本通りやればうまくいくほど甘くはない(すべてを型通りやると管理コスト過多で死にます)ので、それをベースにアレンジは必要です。もちろんファームそれぞれにカスタマイズされた型はノウハウとして持っていますが、いずれもこの世界標準の管理手法が下地になっていますので、その知見があればどこのファームでも応用がきくはずです。

ちなみに戦略コンサルタントであっても今やプロジェクトマネジメントは必須スキルなので、自分は業務コンサルやITコンサルを目指していないからといって避けては通れませんよ。実践できない戦略は今時誰からも求められませんから。

ITIL(Information Technology Infrastructure Library)

ITサービスのマネジメントを体系的に学習できる資格体系です。その初版の成立は1986年と古く、IT企業が参照する国際標準のガイドラインとしての地位を確立されているデファクトスタンダードと言える知識体系です。

ITILはファンデーションから、エキスパート、マスターといくつかのレベルに応じた資格が用意されており、大手のIT企業では認定を受けることが推奨されていたり、キャリアアップの要件になっていたりする場合があるため、この資格を持っていると一定の箔付けになると思います。

ただ、個人で取得する資格としては手に入る一般書籍が少なく、高価な公式教材を購入したり上級資格を受けるのに研修を受ける必要もあるため、優先度は下がる資格ではあると思います。

公認会計士・税理士・日商簿記検定

企業経営において会計知識もまた決して避けては通れないものです。

経営コンサルタントになるために年単位の学習が必要な公認会計士試験を受けるのは決してコスパが良いとは言えませんが、上場企業が発行している財務諸表を読み解ける程度の知識は最低限持っておく必要はあるでしょう。

経理に関わる仕事でない限り、細かい仕訳方法を覚える必要はありませんが、それでもどういった考え方で会計処理がなされるのかを大まかに理解しておく意味でもひとまず日商簿記の3級で基礎知識を、製造業の案件に関わりたいのであれば2級くらいには挑戦してもよいかもしれません。

ビジネスケースを描く際にも、会計的な裏付けは必須ですから、そこで考慮すべき細目を把握しておくと抜け漏れを防ぎつつ検討の時間効率を高めることができると思います。

MBA

資格としては毛色が異なりますが、経営修士号を持つ人材が経営コンサルタントに多くいるのは確かです。一定の条件をクリアすることでMBA取得の権利を得られるようなファームもあり、未だその価値は失われてはいません。

ただし、MBAで学ぶような学術的な知見は今や多くの書籍にまとめられて出版されているので、MBAで学ぶ知識そのものの価値は年々下がっているというのが実感です。

昔はMBAホルダーなのに使えないというレッテルを貼られてしまった人の噂話を聞くことが割とよくありましたが、最近はそもそもMBAは話題にすら登らなくなりました。特にリーマンショック後は、国内MBAに通う人がずいぶん増えた実感もあるので、それだけ良くも悪くも一般的になってしまったのだろうと思います。

それだけMBAの知識そのものが陳腐化してしまった以上、いろんなところで語られている通り、そこで得られるものは、仕事を介さない人脈や、海外留学であれば住むことで感じる現地の感覚など、勉学以外の要素が大きいです。

私自身、一定の社会人経験を経た後の留学経験(MBAではありませんが…)で得たものは大きかったと思いますが、やはり得難い経験だったと思うのは、当時一緒に学んだ同級生たちとの交流の中から生まれたものばかりでした。卒業後も仕事や旅行で海外を往来した際に、お互いにキャリアを積んだ友人と会って近況報告しあうというのはキャリア上も有意義な時間ですし、なにより楽しみでもあります。

まあ、これは学校で学んだ経験のある方は皆さん概ね賛同してもらえる話でしょう。

まとめ

繰り返しになりますが、資格の取得をゴールに置いた学習はコンサルを目指す上ではあまり役に立つものではありません。その資格を何に生かすために取得するのか、あるいはその資格をいかに効率的に取得するのかなど、何らかの目的意識を持って臨むことのほうがよほど大切です。

コンサルの面接対策としては、その部分を自己アピールの素材として有効活用できるように考えて戦略的な資格習得にチャレンジしてみてください。