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外資コンサルの福利厚生の実際

Lean liberty is better than fat slavery. ーJohn Ray

隷属して太るよりも痩せて自由を手にする方が良い

ジョン・レイ

コンサル転職を考えています。現在は日本の大企業に勤めていて福利厚生が充実しているのですが、コンサルは高給な分だけやはり福利厚生は劣っているのでしょうか?

福利厚生は個々の会社の報酬制度設計に基づくものなので一概に業界をくくって話をするのは難しいですが、私の経験や業界の仲間からの話をもとにざっくり概観を述べてみたいと思います。

福利厚生は規模の経済が働くものなので、大企業ほど充実しているであろうことは想像に難くありません。しかし、意外に思われるかもしれませんが、外資コンサルファームは人のリテンションには日本の大企業よりもずっと力をかけており、福利厚生の面でも日本の大企業を凌駕する側面があります。終身雇用を前提に入ってきている人材の離職を防ぐ労力と、転職・独立を前提に入ってきている人材の離職防止にかけるべきコストを比較すれば、圧倒的に後者の方が大きくなることは自明ですよね。

本記事では、そんな外資コンサルファームの知られざる福利厚生について解説してみます。

ボーナス・出世スピード

福利厚生の話に入る前に、まずは日本企業と比べたときの圧倒的な魅力である昇給スピードについて書いておきます。

給与水準が上がらなくなって数十年というデフレ経済の日本と違って、海外のインフレ水準が反映されている外資ファーム(コンサルに限らず)では、年々、着実にベース給与が上がってきています。(ネットには古い情報が多く残っているのでググって出てくる水準よりもさらに高いと思って間違いありません)

外資コンサルファームでは20代で1000万円プレイヤー、マネジャー職になるのは当たり前、順当にいけば30代半ばで2000万円の水準も普通に到達可能です。しかも驚くべきことにこの先、まだこの水準は上昇していきそうな勢いで人材獲得競争は激化しています。

さらに評価に応じたインセンティブ、すなわちボーナスの割合は非常に大きく、同じクラスでも評価が高ければ数百万円もの追加ボーナスをもらえることがあります。このように基礎給与が大きいのでたかだか年間数万円レベルの福利厚生は霞んでしまうというのがまず福利厚生を考える上での前提になります。

旅行補助やサービス

本社のオフィススペースすら最小限というコンサルファームには、大企業によくある保養所のようなものは基本的にないと思っていいでしょう。

一方で、クライアント拠点等への出張が多いこともあり、国内外のホテルチェーンが各ファーム向けに特別価格を設定していたり、キャンペーンをやっていることはよくあります。とりわけ海外旅行が趣味であれば、この割引制度でかなりの恩恵を受けることができます

また、クライアントと立ち上げたサービスの特別優待や事前モニタリングなどの案内がそこそこの頻度であったりするというのもコンサルティング会社ならではですね。

各種保険制度

日本に会社を置く以上は、日本の法の下、健康保険制度や雇用保険制度はどの会社も同様です。健康診断なども日本企業と変わりはありません。

ただし、健康保険については、やはり大きな企業の方が安くなります。こればかりは致し方なしだと思います。総合系のファームであればその点有利なことは間違いないですが、せいぜい月額数千円〜数万円程度の差なので、年収を考えれば気にするような額面ではありません。

保険の面では、マネジャークラス以上には万一の事故や疾病に備えた掛け捨ての保険に会社が加入しているケースも多いと思います。家族のある方は自身で特別な生命保険に入らなくても一定の保障が受けられる安心感がありますね。

退職金制度

退職金制度は401kを採用しているケースが多いでしょう。いわゆる日本企業のような従来型の退職金制度はないと思ってください。月次の報酬と合わせて退職金相当額が振り込まれるという感じですね(もちろん年収とは別)。定年はもちろん設定されてはいますが、定年まで勤めるという人がそもそも稀有なのでこういった制度設計で納得感はあります。

上場企業、というといくつかのファームに限られますが、社員向けの持株制度やストックオプションなどのインセンティブは金銭的なメリットがかなり大きいと言えます。どのファームも右肩上がりなので、とりわけ長く勤めているパートナークラスの方たちからは相当な資産形成を実現しているという景気の良いお話をよく聞きます。

他には、会計系のファームであれば公認会計士年金基金への積立金が退職時にもらえたりします。

教育制度

社内ナレッジ・トレーニング

個々人のスキルこそが資本という業態ですから、社内トレーニングはとにかく充実しています。

基礎的なコンサルタントとしての思考訓練などは各クラス別で準備されています。そういったトレーニングのベースにあるのはファームが実際に経験した過去プロジェクトの知見なので、ファーム外では入手不可能なものが数多くあります。

ビジネスに関わるありとあらゆる分野の情報がファーム固有の経験知として蓄積され、形式知化されており、プロジェクトの合間にはそこから様々な知識を吸収することが可能です。

当然、社外のトレーニングなども必要に応じて受講することが可能です。プロジェクトにアサインされる際に必要なスキルがあれば、そのためにプロジェクト費用を投じてトレーニングに参加させてもらうことも容易です。

海外研修・MBA留学

グローバルファームでは、職位が上がるごとに世界各地のメンバーを集めて集合研修を行うのが習わしです。チームを組んでケースに取り組むことが多いと思いますが、まあ、それを名目にした慰留イベントかつネットワーキングの意味合いが強いですね。

海外各地からの参加者と交流することでグローバルファームにいることを実感し、国境を超えたコネクションが強まっていきます。こういった海外研修のタイミングの前後にお休みを取って海外旅行に行くという人も結構いますね。

また、ファームによっては一定の年次でMBAへの留学権利を得られるところもあります。MBAでの学びそのものがファームでの実践経験に勝るとは思えませんが、やはり世界各地から集まる優秀な人材との利害を排した交流で得られる経験や人脈は、グローバルで活躍しようという目的意識を持っている人にとってはとても魅力的なものに写るでしょう。

休暇制度

プロジェクトの合間の長期休暇

休みの取りやすさは日本企業の比ではありません。

プロジェクト期間中に休むことは流石に難しいですが、プロジェクトの切れ目で長期休暇を取ることができるというのは一般的な日本企業ではなかなかできないぜいたくな経験でしょう。とりわけ繁忙期を避けた旅行で得られる金銭的なメリットは非常に大きいですし、混雑も避けてのんびりとリフレッシュするのにもってこいです。

仕事が頭の片隅に残った状態での旅行、それも1週間程度の休みだと、どうしても旅の半分は仕事のことを考えてしまいどこか憂鬱な気分になってしまうものですが、プロジェクトの切れ目でなんの憂いもないタイミング、そして2週間を超えるような長期休暇を取れるとリフレッシュできる度合いは比較になりません。

仕事以外の生きがいを持つ人にとって、このような休暇制度のあり方は理想的なものではないでしょうか。

育休

育休が取れないということは決してありません。育休を推奨されることはあれ、育休を申請して上司から嫌な顔をされたとかましてや否認されるというような話は一度も聞いたことがありません。外資系ファームの主力人材の年齢層が20代後半〜30代と子育て適齢期と重なるため実に多くの人が育休で休んでいます。

コンサルファームでは、プロジェクト単位でものごとが動いていくため、人の入れ替わりは当然という業態特性に加えて、過去に仕事で家庭を犠牲にしてきた世代がいないというところもこういった制度の使いやすさにつながっているのかなと思います。

勤続記念休暇

勤続10年などの節目での長期休暇などももちろんあります。日本企業でもあるので特筆すべきことはありませんが、年限によっては旅行補助費のようなものが出たりもしますね。

年次パーティー

外資系企業はクリスマスの時期に全社的にホテルなど大きな会場を貸し切ってパーティーを行うのがならわしです。日本企業でいう忘年会に相当しますが、大きなビュッフェ会場で本格的な出し物など、タキシードやドレス姿の社員およびその家族が大勢集まって賑わう様子はなかなか日本企業では体験できないものかなと思います。

他にもマネジャーやパートナーに出世した際のお祝いのパーティーや、年度の区切りの年次集会は著名人を迎えて執り行われたりしますし、こういったイベントごとはかなりの頻度であります。

会社の飲み会

日本の大企業には、このご時世にもかかわらず、宴席の序列だったり、上司へのお釈だったり未だにパワハラ・体育会文化が残るオールドスタイルの飲み会が開催されている会社が多くありますね。しかもそんな飲み会に嫌々参加しながら、スタッフ職ですら数千円の支払いが必要だったりと、なかなか闇深い世界だなと傍目に見ていて思います。

そんな世界と比べると、外資コンサルの飲み会は天国です。

まず、マネジャー未満のスタッフ職に関しては、社内の飲み会で自腹を切ることはほとんどないと思います。近年はどのファームも厳しくなりましたが、伝統的には経費で社内の飲み会など行われていたので、実はエグゼクティブクラスでも財布は痛まないという構図でした。ただ、近年は法的にも厳しくなってきたのでとりわけパートナーはもちろんシニアマネジャーくらいの方は、自腹を切ってスタッフを慰留している方も多いのかなと思います。

なお、飲み会での席の序列やお酌などが強要されることは一切ありません。日本の伝統企業であるような飲み会参加が強制されることもありません。しかし、スタッフはただ飯、ただ酒にありつけるのでむしろ積極的に参加する人の割合が圧倒的に多いと思います。

お店選びは主催者の趣味によりますが、接待の練習もかねてという名目で若い頃でも比較的格式の高いお店などが選ばれることも多いのかなと思います。そういった経験をしていくので、この業界には良くも悪くも食通の方が多いですね。

まとめ

今回は福利厚生という側面で外資コンサルファームの実態を書いてみました。冒頭にも書いた通り、個々の制度は各社違いがあるのでここに記載しなかったような面白い制度があったりもするでしょうが、概ねここに記載したような雰囲気の制度設計がなされていると思います。

おまけとはいえ、馬鹿にはできない制度なのでぜひ外資コンサルになった際は有効活用してください。