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【面接官が斬る】コンサルに高学歴が必須という嘘

Education is what remains after one has forgotten what one has learned in school. — Albert Einstein

教育とは、学校で学んだことを忘れた後に残るもののことである。

アルベルト・アインシュタイン

コンサルタントになるには高学歴が必須だという噂をよく聞きますが本当ですか?

コンサル業界についてWEB検索してみると転職エージェントの記事ばかり出てきますが、その多くで外資系コンサルは学歴フィルターがあるという記事が用意されていますね。しかし、長年この業界で働いてきた実感としては確かに高学歴な人材が多いことは間違いありませんが、学歴だけでフィルタリングされることはないというのが事実です。

何よりWEB上の多くの記事で述べられている理屈にはちょっと首を傾げるものもあるので、この記事ではそのような情報に焦点を当てつつコンサル業界と学歴の実態について掘り下げてみようと思います。

この記事の要約
  • コンサルに高学歴は必須ではない
  • にもかかわらず転職エージェントが嘘の情報を広めている
  • ただし、高学歴の割合が高いのは事実
  • 高学歴でない人の出願対策

コンサルに高学歴が必須という嘘

応募者のスクリーニングのための学歴という嘘

出願時の履歴書には当然学歴や職歴が記載されているため、それを選考過程で参照されないということはないでしょう。

しかし、活況のコンサル業界の採用側からすればできるだけ多く人材採用したいというインセンティブがあるため、他の要因を勘案せずに学歴だけでフィルタリングして可能性のある人材を選考の俎上に乗せないなんて暴挙はありえません

捌き切れないほどの応募者が殺到する新卒採用とは異なり、転職の応募者はそこまでの応募総数ではありません。そのため、書類選考段階では、活躍できそうなとっかかりが少しでもあれば積極的に次のプロセスに進めるような選択がなされているように思います。つまり、高学歴はそこでの加点要素ではあっても、低学歴であることが減点要素ではないということです。

そして書類選考や事前テストなどを通って面接までたどり着けば、学歴そのものが合否判断に影響する割合はほぼゼロというのが面接官としての実感です。もちろんその経歴情報を見たことによる一定のバイアスは消しきれないと思いますが、少なくとも私は学歴や専攻の情報は本人のキャラクターを理解するための参考にすることはあっても、学歴が低いからという理由で不合格にしたことは一度たりともありません。

さらに言えば、学歴はおろか出自や年齢などの情報を面接で確認するということすらNGというのが世界的な潮流なので、日本国内においてもそういった流れは今後加速していくことでしょう。

クライアントへの経歴提示のためという嘘

コンサルのプロジェクトでは、コンペ時やプロジェクトの開始時などに担当コンサルタントの経歴情報を含む簡単なレジュメを提案書やキックオフ資料に添付してクライアントに提示することはよくあります。

外資コンサルが対峙するクライアントはやはり大企業が圧倒的に多いのが事実です。そのため、カウンターパートとなる方々も錚々たる学歴の方が多く、学歴で劣っていると関係上舐められたりコンペで負けるリスクがあるということから、こういったレジュメに記載できる高学歴でなければ採用されないという趣旨の記事を見かけます。

しかし、プロジェクトで重要なのはあくまでもそのプロジェクトを成功させるに足る経歴であり、どこの大学を出たかはほとんどの場合、全く関係がありません。にも関わらず、学歴が低いからという理由でプロジェクト成功に必要なスキルを有する人材やチームを排除するような意思決定が真っ当な企業で行われるでしょうか?常識的に考えてありえないですよね。

実際、私自身は高学歴ですが、学歴をこの手のレジュメに積極的に記載したことはありません。プロとして記載したい重要な経験が他に多くある中でただ箔付けのための学歴情報でスペースを埋める意味がないからです。

学歴を開示してクライアントと出身校が同じであれば同窓意識で仲良くなりやすいということはもちろんありますが、学歴が影響する場面なんてせいぜいその程度なのです。付け加えると、こちらの学歴を聞いてくる顧客はえてして低学歴な方ばかりだったりもします。

なぜ転職エージェントは嘘の情報を広めるのか

転職エージェントがコンサルで学歴フィルタリングがあるという嘘を喧伝する理由は、彼らのビジネスモデルをイメージすれば容易に想像がつきます。

転職エージェントという職業は、紹介した応募者が企業から採用されない限り報酬が発生しないという成果報酬型のビジネスです。したがって、どれだけ合格確率の高い応募者を集められるかというのが彼らの収益性の肝ですから、合格確率の高い高学歴の応募者を集めることは、とりわけコンサル転職を生業とするエージェントにとって重要な集客上の課題といえます。

このような転職エージェントが広告記事として発信するならば、限りある面談時間を節約するために低学歴な応募者が来ないようにふるいをかける情報発信をすることは必然でしょう。

ググって検索上位に出てくるようなSEO手法に長けたエージェントの情報にはこのようなバイアスがかかっているということを前提に読み解く必要があります。

なぜコンサルの高学歴比率が高いのか

さて、そうはいってもやはり高学歴な人材が圧倒的に多いのがコンサルファームの特徴です。東大、京大、一橋、東工大、慶応、早稲田。このくらいの名前を出しておけばおそらく8割以上の確率で外資コンサルファーム在籍者の学歴は当たるはずです。

それは高学歴を得るために取り組んだ勉強が、コンサル業界で活躍するために必要な能力を育むのに適切な訓練でもあったからです。単に記憶力を問うような穴埋め式ではない、思考力を問うような記述式の高度な問題は東大、京大レベルの受験勉強で鍛えられているということは紛れもない事実なので、そういった人材がコンサルの門戸をくぐる確率が高いことは疑う余地がありません。ただし、それは東大、京大の学歴があるからコンサルに入れるという因果関係ではないということです。

ちなみに、やや極論ですが、コンサルタントという職業、とりわけ戦略に関わる仕事をする上では知らなくてよい知識はないというのが私の持論です。思いもよらない情報の組み合わせからアイデアは生まれてくるからです。好き嫌いや得手不得手で情報を取捨選択しているようでは問題解決に必要なピースが揃いません。

短期間で新しい課題に取り組んで解を導いていくには、どんなタフな問題に対しても知的好奇心を持って貪欲に情報収集し、深く試行しつつスピーディに仮説検証を繰り返していく必要があります。

そういった資質が求められる以上、国語だろうが社会だろうが数学だろうが、どんな学問分野でも自ら興味を持って学べるということはこの業界で戦う上で大きなアドバンテージになりうるでしょう。その意味でもやはり他の大学よりも多くの教科を深いレベルで学んできた東大・京大の学生に一日の長があることは否めないのかなと思います。

高学歴でない人はどう対策すればよいのか

上述のとおり、大学受験段階での勉強がコンサルで必要とされる能力と親和性があるため、コンサル業界に選抜される人材に高学歴が多いという結果は否めません。

では、大学受験に失敗してしまった、あるいは大学受験段階では学問に興味を持てなかったという方たちに逆転の目がないかというと決してそんなことはありません。もちろん狭き門ですが、最低限の知的訓練と、高学歴な人材でも持ち得ないような経験を得ることで逆転を狙いましょう。

具体的な方法論については別記事でまとめたいと思いますが、ここでは以下、大きく2つの方法を推奨しておきます。

基礎的な知的訓練を積もう

偏差値に集約される類の優秀さのうち、とりわけ計数能力、言語能力を高めることは重要です。

外資系コンサルファームの面接過程では、ケースやフェルミ推定などで思考力を試されます。また、それ以前にWEBテストに合格する必要もあるでしょう。

ここを乗り越えるにはやはり最低限の論理的思考水準をクリアする必要があります。こればかりは避けては通れないですし、そもそもその能力が足りていないとまぐれで内定したとしてもその先で地獄が待っています。

今では学習のための書籍が数多く出版されているので、とっつきやすいものを手に取ってトライしてみるとよいでしょう。

異質な経験をしよう

過去は変えられないので、今、その環境で結果を出すことがやはり重要です。

あなたのいる環境で突き抜ける。営業ならナンバーワンを、技術者なら他の人ができないような発明を云々・・・。と、それが簡単にできるならこんなブログ記事に頼るまでもなく、コンサルに限らずすでにどこでもやっていけてますよね。

そのような特異なレベルにまだ到達できていない方は他の人がまずやらないような経験をしてみることから始めてみましょう。といっても特別なことをやる必要はありません。ほんの小さな一歩からでいいのです。

例えば営業であれば、自分の営業先にいつもとは少し違う提案方法を試してみるとか、これまで誰も挑戦しなかった得意先の開拓を始めてみるとか、研究職であれば、まだ誰も手をつけていない研究テーマに手を出してみるとか、海外出張のチャンスがあれば、英語ができなくても手をあげてみるとか。

普通の人が実力不足だと思って少し躊躇してしまうようなことや失敗する確率が高いことにあえて一歩踏み出してみることがスタートです。当然、初めからうまくいくことはまれです。しかし、そうやってチャレンジした経験とそこで学んだことの積み上げがやがて大きな力になっていきます。

そういった小さな一歩をどうやって進んで何を学んできたのか。それこそが面接官として問いたい部分なのです。それは学歴などでは到底測れるものではありません。

まとめ

当記事では、外資系コンサルタントになるために高学歴が必須要件ではないという事実と、とはいえ高学歴な人材が多いという事実を述べた上で、高学歴でないという人の出願対策に簡単に触れました。

年々高まっているコンサル人気にも関わらずまだまだ誤解の多い業界ですが、ぜひ学歴など気にせず多様な経験を積んだ人材にどんどんチャレンジして欲しいと思います。