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外資コンサルに必要な英語力はどのくらいか

Take the first step in faith. You don’t have to see the whole staircase, just take the first step. ーMartin Luther King Jr.

疑わずに最初の一段を登りたまえ。すべての階段が見えている必要はないのです。ただ最初の一歩を踏み出すだけ。 

マーティン・ルーサー・キング・ジュニア

英語はあまり勉強してこなかったので自信がないのですが、やっぱり外資コンサルに入るには英語は必須ですよね?現在、TOEICは600点くらいですが、どのくらいのスコアを目指せばよいのでしょうか?

英語ができなくても入社できるファームもありますが、それでも社内の公式文書などは基本的に全て英語ですから、英語ができないとかなりつらい会社生活になることはご想像の通りです。

TOEICのスコアであれば、せめて800点くらいはクリアできるようになっておきたいところでしょうか。そのくらいのスコアをクリアできないのは純粋に学習量が足りないだけなので、がんばってください。

と突き放して終わってもよいのですが、実際のところTOEICのスコアで測られるような英語力と外資企業で実際に活躍するために必要な英語力には少し違いがあるとは思います。そこで、外資コンサルの実務上、英語が必要になる場面について、少し掘り下げて解説してみようと思います。

外資コンサルで求められる英語力の実際

TOEICのスコアはそれほど気にしなくて良い

冒頭、800点は欲しいと書いてみましたが、おそらく採用や昇進基準でTOEICスコアを採用しているファームであってもそこまでのスコアが必要になることはあまりありません。規定上はおおよそ700点くらいで昇進基準はクリアできる設定になっていることが多いのではないでしょうか。

そして、TOEICの700点くらいをクリアするだけであれば、よほど苦手な人であっても真面目に毎日1-2時間も勉強すれば半年から1年もあれば十分到達可能だと思います。それができないのは苦手とか頭が悪いとかではなく、ただただ勉強時間が足りていないだけです。

TOEICのスコアは誰でもクリアできるとして、肝心なことはそれが仕事で通用するかというところです。おそらくTOEICで700点程度のスコアレベルでは、実際に英語圏のビジネスパーソンの発言を半分も理解できないのではないかと思います。

つまり、ファームで設定されているTOEICのスコアは、事実上何の目安にもならないということですね。では、なぜそんな意味のないハードルを設けるのかというと、英語力が不足しているけれども他に代替不可能な高度スキルを持った人材を転職で引き入れる場合の救済手段という側面が強いように思います。

しかし、現実問題としてTOEICのスコアが足りなくて昇進できなかったという事例はかなり頻繁に耳にします。もちろん比率的には少ないものの、キャリア形成上大きなマイナスになりうる問題なので、そのようなことがないように英語学習は怠らないようにしましょう。

社内で求められる英語力は実はそこまで高くない

コンサル社内で英語が必要な場面は、社内文書の読解、グローバルトレーニングへの参加、プロジェクトにおける海外メンバーとのコミュニケーション、リサーチ目的での海外チームへのヒアリングなどが挙げられます。

クライアントが登場しないこれらの場面においては、それほど英語力が高くなくても困ることは少ないと思います。

まず、読み書き面では、社内の公式文書は全て英語表記になるわけですが、今や翻訳ツールの機能向上は著しく、機械翻訳に頼ればなんとでもなってしまいますね(機密保持のためWebツールなどの利用は禁じられているとは思いますが、最近は社内ツールが提供されていることもあると聞きます)

メールの文面や社内チャットでのやり取りなども、ビジネスマナーにうるさい日本と比べれば、海外チームとのやりとりは驚くほどラフで大丈夫です。伝わればOKという気構えで十分にコミュニケーションが可能です。

次に日本人が苦手とする対面コミュニケーションについてですが、コンサルワークを進めるにあたって、社内外の海外事例収集などが必要な場面が非常に多くあります。そのため、おそらく入社後に英語を話す最初の機会は、そういった情報収集のための海外有識者へのヒアリングという可能性が高いのではないかと思います。

対話でのコミュニケーションは勇気がいりますが、相手がコンサルタントであれば、それも恐るるに足りません。というのも、コンサル業を営む人たちは総じて相手への気遣いのレベルが非常に高いからです。職業柄、ヒアリング経験も豊富なので、論理破綻している言説からも相手が真に言おうとしていることを読み取ろうと心がけてもらえます。

さらに言えば、ノンネイティブとの英語のコミュニケーションが頻繁にあるため、下手な発音や表現の間違いに対しても一般的なネイティブスピーカーよりも寛容なことが多いです。言葉がうまく出ないようなときでも先回りして発言をサポートしてくれたりもするでしょう。

そういった環境は英語学習にとって最高の場なので、積極的に海外のチームとのコミュニケーションにトライする(させられる)ことによって飛躍的に英語力は向上していきます。その意味でファーム参画直後の英語力はそれほど高くなくてもなんとかなると言えます。

ただし、出世したいなら英語力は必須

グローバル企業では積極的に自己主張をしていくことが常に求められます。

英語が苦手であるが故に発言ができないということは、そういった自己アピールにおいて圧倒的に不利な状況を作り出してしまうため、苦手な英語でもとにかく発言する強心臓か、どんな場面でも対応可能な英語力がないと出世のルートは途絶えてしまいます。

とりわけパートナークラスへの出世にはグローバルからの承認は必須で、グローバルの責任者との英語面談やレポート提出などもあったりします。当然、出世後のレポートラインの上長は海外になります。パートナークラスともなれば、収入が数千万円単位で変わるわけですから、そんな出世がかかった大一番で英語が苦手なんて言っていられませんね。

クライアントワークで必要な英語力は高い

クライアントが外資系コンサルを活用する理由は、やはり英語力を含むグローバル経験に依るところが大きいです。したがって顧客からの期待値はネイティブレベルでの英語のコミュニケーション能力ですし、そもそもクライアント側もグローバル企業で全員が英語話者というプロジェクトも数多くあります。

そのような中で英語ができないというのは、もはやクライアントフェーシングの土俵に立つことすらできないということになりかねません。よほどあなたに英語以外の必須能力があれば通訳を用意してくれることもあるでしょうが、そんなことは滅多にありません。

正直、グローバル案件に参画するには、TOEICであれば満点近いスコアが取れないと厳しいでしょう。日本語の会議の場を思い浮かべれば容易に想像がつくと思いますが、相手の言っていることが理解できていない状況でまともな仕事ができることはありえません。

実際の会議で飛び交う発言にはスラングも多いですし、TOEICの設問のようにゆっくりしゃべってくれるわけではありません。そして、そのような場のファシリテーションを担当するのがコンサルタントなのです。つまり、このような英語話者の中でも高いレベルの英語を用いたコミュニケーション能力がなければグローバル案件で活躍することは難しいと言えるでしょう。

ドメスティックな案件に特化するという生き抜き方もあり

日本で仕事をする以上、ドメスティックな案件はいくらでもある

とはいえ、これだけ日本でもコンサル業界がメジャーになった現在では、クライアントが日本向けのビジネスしかしていないようなケースも実はたくさんあります。英語を使うことなくクライアントワークが進むのであれば、英語力不足はさほどマイナスにならないとも言えます。

そういったクライアントの懐に入り、大きな案件を獲得し続けることができれば、英語力なしで出世することは不可能ではありません。実際に英語は苦手でも国内で活躍しているパートナークラスの人材を何人も知っています。

近い将来、英語力は問われなくなる

上述のとおり、英語を捨てて国内特化で生きていくという道はあるにはあるものの、その道で最後まで生き抜くのは限界があるため、やはり英語力は避けては通れない問題です。

と、5年くらい前であればそう断言できたのですが、近年、とりわけここ数年の機械翻訳の発展が著しく、ごく近い将来、人間の通訳を超えるようなリアルタイム翻訳が実現されてしまうだろうという予感があります。

今現在においてもネット上で無料で利用できる翻訳ツールの能力は十分に実用レベルに達していますし、社内で翻訳ツールを使わずにノンネイティブが英語でコミュニケーションすることを禁ずるような企業もすでに現れています。チャットツールの発展で、文書だけのやりとりで仕事が進むようなケースもかなり多くなっていることも英語学習不要論を助長しそうです。

もちろん英語を学ぶことで副次的に得られるものは非常に多くあり、その価値は将来においても失われはしないでしょう。が、ことビジネス局面での意思疎通に関しては英語が話せないことがマイナスに働くのは過去の話になる日は想像以上に近づいているのではないかと特にここ最近のAI技術の目覚ましい進展を観察していて思います。

それを踏まえると、有限の時間の中で英語習得に時間を割かないというのも選択肢の一つになってきたかもしれません。ただし、2023年時点では、やはり英語学習の費用対効果は他の勉強とくらべてまだまだ圧倒的に高いということは強調しておきます。

英語学習の機会

当然ながら、外資系ファームでは英語力強化のための機会は豊富に設けられています。

オンライン教材やマンツーマンレッスン等のコースは社費を出して受講できるでしょうし、社内での英語での交流会や、グローバルの人材とのマンツーマンレッスンなどなど、自らコストをかけることなく学習することも可能です。

実際、TOEICが300点代という壊滅的なスコアで入社しながらも、そういった機会を活用して制限期間で無事に必須スコアをクリアしたという人も身近にいました。

そういう意味では、覚悟さえ決めれば、現時点の英語力がなくとも外資ファームに挑戦してみるのはありかもしれません。(ファームによっては選考自体が英語で進められることもあるので門前払いくらうこともありますが)

まとめ

英語学習は、継続的に膨大な時間を投下しなければ、なかなか習得まで至らないのは紛れもない事実です。とはいえ、かつて言われていたように年齢を重ねてからでは英語習得は不可能ということは全くなく、努力すれば誰でも英語でビジネスができるようになるということは個人的な経験からも断言できます。

とはいえ、日常生活で英語を利用する機会がないのに英語学習を継続するのは至難の技ですから、外資ファームで活躍することをモチベーションに英語学習を進めてみるというのもひとつの手かもしれません。