The time is always right to do what is right.
Perhaps the worst sin in life is knowing right and not doing it. ーMartin Luther King Jr.
正しいことをするのに時を選ぶ必要などない。
人生でおそらく最も罪深いことは、正しいことと知りながらそれをしないことだ。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア
コンサル業界に転職するのによい時期はあるのでしょうか?
外資のコンサルファームは転職希望者に向けていつでも門戸を開いていますので、基本的にはご自身の準備が整ったタイミングで動き出せばよいと思います。
とはいえ、「彼(敵)を知り己を知れば百戦危うからず」と孫子の兵法が謳うとおり、ファーム側の事情を理解することで内定確率を上げることは可能性なので、この記事では転職タイミングを考える上で考慮すべきポイントを解説したいと思います。
目次
業界や社会のトレンドには注意が必要
冒頭でコンサル業界の門戸はいつでも開かれていると書きました。その背景には年々高まる一方のコンサル需要があるのですが、それでもかつてのリーマンショックやコロナパンデミック発生時など、コンサル需要の低迷が予測されるような局面はこの先必ず訪れます。
そういった時期には、やはり一時的に多くのファームが採用数を抑えたり、採用停止に踏み切ることを余儀無くされるのですが、こういうタイミングに限って転職希望者も多くなってしまうという傾向があります。
ファーム側の事情
景気停滞期に採用活動を活性化して優秀な人材を獲得するという戦略をとっているしたたかな企業が世の中には一定数存在します。しかし、コンサル業界は人材の稼働率で儲けるビジネスなので、残念ながらそのような戦略は取りえません。むしろ需要変動に合わせた人員調整によるコストコントロールはビジネス上の要諦の一つです。
世界中の多様なビジネスの中枢に関わり、他のどんな企業体よりも世の中のトレンドの変化に対して鋭敏であるのがコンサルファームです。つまり、景気拡大が予測される局面においては他社に先んじて人員拡大に動く一方で、世の中の需要が萎む可能性を掴むや否や採用を抑えたりレイオフに踏み切るという基本構造を理解しておくことはコンサル業界を志望する上で重要なポイントです。(レイオフ、つまり首切りは日本では法規制があるためにマイルドに行われますが、現実としてあります)
応募者の事情
応募者側の都合に着目すると、景気後退期に自社の業績悪化が進み、給与が上がらないとか、出世の可能性が低い、あるいは早期退職の募集が始まったなどのネガティブな現実に直面したときに転職を考えがちです。
とりわけ大手企業の不祥事や業績悪化のニュースが伝えられると、その後しばらくしてその会社からの応募者が何人もやってくるというのは外資コンサルの面接官をやってきた中で頻繁に見てきた光景です。
実は自社の経営状況は、一社員の立場だと本当にヤバい状況になるまでわからないんですよね。経営陣は社内に向けて常々危機感はあおっていると思いますが、本当の経営危機に関してはそぶりも見せないようにするものなので、従業員が会社の倒産を事前に知ることは意外にも難しいということのようです。実際、倒産企業に勤めていた方に話を聞くと、メディアの報道でそれを知って寝耳に水だったというエピソードを語る方がとても多いです。
倒産は極端な話ですが、景気下落などの外的要因で転職せざるをえないタイミングというのは、自分と同様な境遇の人たちがやはり転職活動を始めているため、競争率がずっと高くなってしまうという現象が間違いなく起きます。
いずれコンサルをと考えているのであれば、そういった最悪のタイミングを避けるためにも平時から一定の情報収集や準備を心がけておくことが大切です。わずか20年前、まさか都銀や大手広告代理店がこれほどまでに凋落する時代が来るなんて誰が想像できたでしょうか。コンサル業界も未来は分かりませんが、いずれにせよ環境が悪化する前に次のステージに移る準備はしておくべきです。
転職タイミングの見極め方
では、ネガティブな外部環境の変化がない平時において、転職タイミングはどのように見計っていけばよいのでしょうか。ここではキャリアチェンジを考える上で押さえるべきポイントについて、概観してみたいと思います。
年齢を意識しないわけにはいかない
言うまでもなく30歳、35歳といった年齢の節目、あるいは新卒3年目、5年目、10年目といった経験年数の節目のタイミングは誰もが意識するものでしょう。そういった節目のタイミングを目処に転職を考えるという人は非常に多いと思います。
そして、建前上は、年齢は考慮しないというのは良くも悪くもコンサルファームの雇用における考え方ではあるものの、現実には年齢に即した期待値があるのは残念ながら偽らざる事実です。
具体的な転職活動の進め方については、第二新卒、20代、30代、40代それぞれで取るべき戦略が異なるため別記事でそれぞれ詳述しますが、戦略的にキャリア形成を考えるのであれば、年齢を目安にどのポジションを狙うのかをしっかり考える必要があります。
節目の年限を過ぎるにつれて、求められるロールの難易度は上がっていきます。それに相応する経験を今の職場で積むことができるのかどうかはこの先の転職を考える上でとても重要な観点です。もし、答えがノーであるならば、できるだけ早いタイミングで環境を変えなければなりません。節目の年齢まで、あと何年残っていますか?その時がきてから動いても遅いです。
ライフスタイルの変化時は転職タイミングではない
面接官をしていると、結婚する/したばかり、子供が生まれる/生まれたばかり、など生活が大きく変わるタイミングで転職活動を始めたという人がかなりの割合でいます。ちょうど候補者がその年代だということを差し引いてもその比率は異常に多いというのが所感です。
人間心理として、何かが大きく変わるときにはそれ以外のことも全部まとめて変えてしまいたくなるのでしょうか。あるいは、大きな買い物をするときに思わず高額のオプションをつけてしまうような心理に近いのでしょうかね。いずれにせよ、なぜか転職理由を尋ねるとライフスタイルの大きな変化を理由に上げる人がとても多いのです。
しかし、転職をするにあたってはそれ以外の不確実な変化はできるだけ少なくするように心がけるのが鉄則です。転職直後は、どれだけうまく進んだとしても環境変化による一定のストレスがかかることは間違いありません。そんなときに、私生活が不安定では成功確率は著しく下がることになるでしょう。実際に、そのような環境下で転職してきて試用期間を待たずして辞めていった人を何人か知っています(なぜ面接を通ってしまったのか謎ですが・・・)。
子供が生まれるのであれば育休はまず100%取れると思いますが、それは試用期間を経てのことです。試用期間はおそらく所定の期間休んでしまうと無条件解雇されますし、パフォーマンスが低くてもそうなります。仮にそこを切り抜けていざ育休を取っても、帰ってきたときは再びゼロスタートになるというのはなかなか辛いものがあります。ちょっとリスクが高すぎると思いませんかね?世の中で最も知的にハードな職場の一つなのですよ、そこは。
もし、あなたが今、そのようなライフスタイルの変化がきっかけでこの記事を見ているのであれば、改めて今が転職すべきタイミングなのか、冷静に客観的に検討して欲しいと思います。
評価期間については一考の余地あり
入社タイミングによっては、その年度の人事考課の対象になるかどうかが変わることがあります。長期的なスパンで見れば誤差ですが、1年分のキャリアの足踏みになる可能性があるというのは頭に入れておいてもよいでしょう。場合によっては、想定よりも1ヶ月早く、あるいは遅く入社することが今後のキャリアにとってプラスに働く可能性があるので、内定後、必ず人事に確認することをおすすめします。ファームによっては年次評価とは別に年度内でのプロモーションが設けられていたり、個別の事情に合わせた対応は可能だったりもするので、内定後の、最もあなたの側に交渉力があるタイミングで情報を引き出してうまく交渉してみて欲しいと思います。
最後に
総括すると、転職したいと思うようなタイミングは得てして転職タイミングではないということですね。
ファーム側の門戸は常に開かれているので、転職するかどうかの最後の判断を行うタイミングはいつでもいいというのは冒頭に書いた通りです。ただし、その決断のための情報収集や準備は平時の、転職を意識しないような時に始めておくことが大切です。
日頃から自分の将来の仕事について、考えてみる時間を設けてみてはいかがでしょうか。